発熱している小児の体温と血清Naの関係
特別講演 演題
2部 「発熱している小児の体温と血清Naの関係 - 進化医学の観点から考察するSIADHの意味 -」
所属・演者
くさかり小児科 草刈章
座長
西村龍夫(にしむら小児科/柏原市)
抄録
「発熱している小児は脱水症になりやすい」と広く信じられているが、実際は、肺炎などの発熱性疾患はしばしば低Na血症が問題になる。これは抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が起こるからであるが、なぜ起こるかについては説明されていない。進化医学の観点からこの謎をとくことにした。
演者は小児科外来の患者で当日の体温と血清Naは負の相関をすることを明らかにした。近年、熱性、あるいは炎症性疾患におけるADH分泌亢進の機序が明らかとなった。ADHは、血液浸透圧を調節するホルモンとされているが、生体の危機的状況における水保持機能のホルモンとしても働き、脊椎動物の陸上進出、そして活発な活動を支えた。輸液療法が行われる以前では、感染症などの発熱性疾患の回復、そして生存率を高めた。危機的状況でのADH分泌は適合といえる。逆にこのような状況での低張液の輸液は、水過剰をもたらし、治癒の阻害要因となる。
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