保護者が”風邪診療”に求めるものは?
特別講演
保護者が”風邪診療”に求めるものは?
- 電話相談から視る医師と保護者の発想の違い -
所属・演者
小児救急電話相談上本町事務所 福井聖子
抄録
大阪府小児救急電話相談#8000は、夜間子どもの病気やケガに関して年間約4万件以上保護者からの相談がある。保護者は『子どもがいる』という共通点のみで『保護者』と一括りにされるが、電話相談では経験も観察力も理解度も考え方も異なる人たちが個別に家庭で聞きたいことについて話をするため、医療現場感覚の相談員にとって何を求められているのか測りかねることも多い。電話相談で学ぶのは『聴く』作業の重要性であり、最近は会話のすれ違いポイントも徐々に見えてきた。
一般に専門職は思考回路が統一される。たいていの医師は患者から話を聞くとき、問診回路に入り、診断につながる質問を重ねて話を聞く。また、診断基準や診断に基づく治療方針は仕事上の重要事項である。医師からの説明は、これらを保護者にわかりやすく伝えることと考えられがちである。一方保護者の関心事は、『風邪の診断基準』や『治療のあり方』ではなく、『症状が治るか』『自分が何をしたらいいか』『生活をどう維持するか』などが多い。本来保護者の役割は、子どもの体調の把握や判断、看病や生活の維持にあるので、家庭内の継承がなければ疑問は医療機関に向けられる。総合的に子どもを見守るためには保護者の力を育てる手立てが必要であり、『風邪』は貴重な機会となり得る。『風邪』を子育てにどう活かすかという視点で考えてみたい。
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