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グラム染色像を患児や保護者に供覧して治療法を説明する12年間の試み

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「 先進的な取り組み 」

演題

 診療所において、グラム染色像を患児や保護者に供覧して治療法を説明する12年間の試み
  ~ 耳鼻科外来での抗菌薬適正使用を目指して ~

所属・演者

 まえだ耳鼻咽喉科クリニック  前田 雅子

抄録

 日本では2016年4月に薬剤耐性菌対策のアクションプランが、さらに2017年には抗微生物薬適正使用の手引き(第一版)が発表され、市民に対して抗菌薬の適正使用を啓発する必要があると明文化されました。しかし、実際には中小の診療所の多くで、抗菌薬の適正使用の推進には妨げとなる、中小施設ならではの独特なハードルがあるように感じています。たとえば、患者からの抗菌薬処方の要望が根強いと処方せざるを得ない場合があること、また抗菌薬の処方とは無関係に治癒した場合でも、あたかも処方された抗菌薬によって治癒したかのような錯覚に患者も処方医自信も陥りがちな点があげられます。
 私たちはその解決の糸口を求めて、12年前に日常診療にグラム染色を導入することで、簡便・迅速に原因菌を推定し、処方医に適切な抗菌薬の選択を促し、それに付け加えてグラム染色像を患児と保護者にリアルタイムに開示し画像を説明する取り組みを始めました。この方法により、抗菌薬の処方量は6分の1に減少、また処方される種類も大きく変化し、処方件数はマクロライド系は20分の1に、セフェム系は10分の1にまで減少、一方でペニシリン系は増加に転じました。この結果は染色画像を繰り返し開示し続けたことで医療者側の感染症診療のスキルが向上しただけでなく、患者側の理解(同意)が得やすくなったことが影響したのではないかと感じています。今回は、薬剤師としての視点を中心に、この取り組みの概要と成果および今後の展望について報告いたします。

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